カフェイン、
摂りすぎるとどうなる?
朝の目覚めのコーヒー、
仕事途中のティーブレイク、
肉体的な疲れを
感じたときの栄養ドリンク……。
そこに共通するのは
「カフェイン(caffeine)」です。
嗜好品から医薬品まで
幅広く使われるとても身近な存在ですが、
その“正体”はご存知ですか? 「カフェインの効能って
眠気覚ましだけじゃないの?」
「カフェインって
カラダにいいの?」 そんな疑問に
お答えするため、
カフェインの効能やメリットを徹底解説。
気になる運動への影響や
上手な摂取方法など、
管理栄養士の
深野祐子さんにアドバイスをいただきます。 カフェインとは?その効能を解説
カフェインは有機化合物の一種です。
たんぱく質やビタミンのような
栄養素ではありませんが、
以下のような作用を持っています。 ●覚醒作用・利尿作用 カフェインは
脳内のアデノシン受容体に
拮抗するため、
適量を摂取することで
覚醒作用、
利尿作用などが
期待できます。 ●解熱鎮痛作用(血管拡張作用) 痛み止めの医薬品にも
使用されています。
たとえば、
血管収縮作用があるため、
血管の拡張によって
引き起こされる
頭痛に効果があります。 ●興奮作用 交感神経を
刺激することで
食欲を抑える作用が
あるともいわれます。 ●脂肪燃焼作用 脂肪細胞中の
ホルモン感受性リパーゼ
(脂肪分解酵素)を
活性化する作用があり、
脂肪の分解促進を
促すといわれています。
カフェインが
含まれる食品と
その含有量をチェック!
カフェインはコーヒー豆、
茶葉、
カカオ豆、
ガラナなどに
天然に含まれている
食品成分のひとつです。
多く含まれる食品の代表は、
やはりコーヒーと
お茶でしょう。
そのほかにもコーラ、
チョコレート、
眠気覚ましの
チューイングガムなどが
挙げられます。 エナジードリンク類は
缶や瓶で購入することが
多いと思いますが、
成分表示は100mlあたりで
表記されていることが多いので、
1本(1瓶)あたり
どれくらいの量が
含まれているのかを
確認しておく必要があります。 玉露
実際に淹れるときに
使用する茶葉は1人分
ティースプーン1杯(2g)、
お湯の量は50ml程度
高級な玉露は
煎茶のようにガブガブと
飲むものではないので、
問題ないと思われます。 ちなみに
「コカ・コーラ」に含まれる
カフェイン量は
10mg/100mlで、
レギュラーコーヒー
(浸出液)の
約1/6ほど
(ただし飲む量によっては
コーヒーと同等程度か
それ以上になる場合もあります)。
また、
チョコレートは含まれる
カカオマスの量によって異なり、
ミルクチョコレート50g
(板チョコ1枚ぐらい)で
15mgのカフェインがあり、
カカオマスの多い
ハイカカオチョコレートでは
カフェインの量も増えます。 カフェインの
摂りすぎには注意。
1日の摂取量の目安は?
眠気覚ましなどの
効果があるカフェインですが、
その感受性は
個人差が大きく、
人によっては
気分が悪くなることがあります。
カフェインに弱い人でなくても、
過剰に摂取すると
中神経系の刺激による
めまい、
心拍数の増加、
興奮、
不安、
震え、
不眠症、
下痢、
吐き気などの
健康被害をもたらす
場合があるので
注意が必要です。 しかも、
日常的に多くのカフェインを
摂っていると
感受性が次第に低下し、
カフェインを摂取しないと
眠気や疲労感、
集中できない状態に
なってしまうこともあります。
すると、
摂取量がどんどん増え、
最後には中毒症状を
引き起こす量まで増加。
これがカフェイン依存症です。
管理栄養士の深野裕子さんはこう注意します。
「カフェインの感受性には
個人差が大きく、
健康におよぼす量を
正確に評価することが
できないことが理由となり、
日本では1日の摂取許容量の
設定がなされていません。
とはいえ上限がないわけではなく、
1日のカフェイン摂取量は
300mg/日(5mg/・体重)に
とどめるべきとする報告(注1)も
あるので、
この辺を目安にして
おくといいでしょう」 (注1:
『日常生活の中における
カフェイン摂取 -
作用機序と
安全性評価- 』
栗原 久
東京福祉大学 カフェインは
トレーニングに有効なのか?
ここからが本題です。
カフェインは
トレーニング中のカラダに
どのような影響を
与えるのでしょうか? カフェインは、
おもに持久的な
運動能力を向上させます。
脳の興奮水準を高め、
長時間運動時の疲労を軽減、
パフォーマンスアップに
ひと役買ってくれます。
また、運動中の脂肪利用を
促進し、
糖質(グリコーゲン)の
枯渇を予防し、
運動持続時間を
延長することも
知られています。 カフェインを
摂取するなら
運動前がおすすめです。
前段でふれたように、
カフェインが
脂肪分解酵素を
活性化することによって
体脂肪の分解や
代謝がより促進され、
高い脂肪燃焼効果が
期待できるからです。 個人差はありますが、
摂取・
吸収されてから
30分~2時間で
その効果が現れます。
半減期は約4時間と
いわれていますが、
こちらも人によって異なり、
2~8時間の幅があります。
これもたくさん
摂ればいいわけではなく、
「運動開始60分程度前に、
3~6mg/体重を
カプセルなどで摂取」するのが
最適で、
これ以上摂取量を
増やしても
さらなる効果は
期待できないとされます
(注2)。 (注2:
『スポーツ栄養学
科学の基礎から「なぜ?」に
こたえる』寺田新:著 東京大学 そこまで厳密でなくとも、
開始前の1杯のコーヒーが、
体脂肪減少のための
有酸素運動
(ダイエットのための
ウォーキングやジョギング)などの
脂肪燃焼効果を高め、
フルマラソンなど
持久系のスポーツでは
パフォーマンスアップに
役立ってくれるでしょう。 ちなみに、
興奮作用があるカフェインは、
かつてドーピングの対象に
なったことがあります。
2004年以降、
世界アンチドーピング機構による
禁止薬物リストから
外されていますが、
今も監視プログラムに
指定されています
(禁止物質ではないが、
ドーピングに使用される
危険性がある物質として
放置せずに
監視対象とするもの)。 健康のことを
考えた効果的な
カフェインの摂り方
トレーニングだけでなく、
日常生活の中でも
健康的にカフェインを
摂取する注意点を
再度まとめておきましょう。 ●個人差がある感受性に注意 感受性の高い人が
多量に摂取した場合、
交感神経活動が亢進
(こうしん)し過ぎたり、
心臓等の循環系に
大きな負担がかかる場合が
あります。
過度に怖がる
必要はありませんが、
自分のカラダに合うか合わないかは、
自分自身で見極めていく必要が
あります。
●過剰摂取に注意 カフェインを
過剰に摂取した場合、
めまい、
興奮、
不眠症、
吐き気などの
健康被害をもたらすことが
あります。
食品の組み合わせで
知らないうちに
多量のカフェインを
摂取してしまうことも
あるため、
注意しなくてはなりません。 特にエナジードリンクや
サプリメントは、
コーヒーなどの飲料と比較して
より多くのカフェインを
含んでいます。
さらに、
缶入りの飲料は
飲み切らなくてはならないので、
思っている以上に
摂取してしまいがち。
眠気覚ましで
エナジードリンクを
立て続けに何本も
飲むのはNGです! ●摂取のタイミングに注意 カフェインを多く含む
飲み物とともに摂取した場合、
吸収を阻害してしまう
栄養素があるので注意が必要です。 たとえば、
コーヒーや緑茶、
紅茶、
ウーロン茶などには
タンニンが含まれます。
タンニン自体には
抗酸化作用がありますが、
一方で鉄や亜鉛などの
吸収を抑えてしまいます。
さらにカフェインの利尿作用により、
鉄や亜鉛の吸収を
助けてくれる
水溶性の
ビタミン=ビタミンCも、
余計な水分とともに
排出されてしまいます。 特に貧血が気になる人や、
カラダをしっかりつくりたい、
筋肉をつけたい人は、
食事とともにお茶を飲むのではなく、
食事と食事の間の
タイミングで
楽しむのがおすすめです。 ●摂取の時間帯に注意 カフェインには
体内時計を動かす
作用があります。
体内時計とは
脳と胃腸などの
臓器に備わった機能で、
1日の活動をコントロールしています。
この体内時計が整うことで
消化や吸収の力が高まり、
カラダは本来の力を
発揮しやすい状態となります。 つまり、
健康を考え、
カラダづくりをしたり、
筋肉をつけたり、
運動のパフォーマンスを
高めたい場合には、
体内時計が整っていることが
マストなのです。 しかし、夜遅くまでの仕事、
PCやスマホ、
不規則な食事、
ストレスなどが
多い現代の生活では、
体内時計は乱れやすい
状況にあります。
体内時計をリセットするのに
もっとも効果的なのは、
朝日を浴びることと
朝食を摂ることですが、
朝にカフェインを摂取すると
体内時計を
早めることができます。
朝のコーヒータイムは
実に
理にかなっているわけです。 一方で、
夕方以降は体内時計を
遅らせてしまうことが
わかっています。
夕方以降のコーヒーや
お茶は体内時計を
乱す原因にもなるので、
避けるようにしましょう。
「カフェインには
さまざまな作用があり、
上手に使えばとても役立つものです。
食品はもちろん、
サプリメントとして摂取する場合には、
過剰摂取のリスク、
個人によって感受性が
異なる点をしっかり理解したうえで、
まずは少量から試していくこと。
自分の体質に合うのか?
コンディションはどうか?
といった点を自分自身で
確認しながら
とり入れていくことが大事です」
(深野さん) 【コーヒー豆知識】
コーヒーでカフェインを
美味しく摂ろう カフェインの最後は、
やはり飲み物としての
コーヒーの話で
締めくくりましょう。 コーヒーは古くから
食用されており、
その起源には
いくつもの説があって
ハッキリしません。
今のように豆を炒って
飲むようになったのは
13世紀からといわれます。
一般に広まったのは
ヨーロッパでカフェ
(コーヒーハウス)が
開業した17世紀で、
次第に世界へと
広がっていきました。 飲み物としてのコーヒーは
約99%が水分。
たんぱく質や脂質なども
微量含まれていますが、
コーヒーから
栄養を摂ることは
ほぼできません。
さらに200mlの
ブラックコーヒーの
カロリーは8kcalと、
カロリーもほとんどありません。
しかし、砂糖を入れると
31kcal、砂糖+ミルクで
40kcal、カフェオレで71kcalまで
上がるので、
ダイエット中の方は
要注意です
(文部科学省
「食品成分データベース」を
もとに試算)。
一方、コーヒーには、
苦味成分であるカフェインをはじめ、
クロロゲン酸、
ポリフェノール、
オリゴ糖、
タンニン、
褐色色素、
ニコチン酸(ナイアシン)など
さまざまな成分が
含まれています。
カフェイン以外では、
クロロゲン酸などの
ポリフェノールに注目です。
ポリフェノールには
活性酸素を除去し、
過酸化脂質の発生を
抑える働きがあり、
抗疲労作用、
抗酸化作用、
抗ガン作用、
抗ウイルス活性などの効果が
期待されています。
ニコチン酸
(ビタミンB群に属する
必須栄養素)にも
血液中のコレステロール値を下げ、
動脈硬化を予防する
効果があります。
また、アロマと呼ばれる
コーヒーの
奥深い香りの成分にも、
抗酸化作用のある物質が
300種以上含まれていますが、
残念ながら淹れて
5分ぐらいで
消えてしまうそうです。 健康に良い
コーヒーではありますが、
もちろん
飲み過ぎれば胃が荒れたり、
夜眠れなくなったり、
健康に害をおよぼす
場合もあります。
特に妊娠中の女性は、
カフェインを過剰に摂取すると
胎児に酸素や栄養素が
届きにくくなるとされます。
最近は、
カフェイン成分を減らした
インスタントコーヒーや
コーヒー豆も
販売されているので、
コーヒーが苦手な人や
妊婦さんにおすすめです。
その際、
「カフェインレス」という表示は
カフェインが完全にゼロではなく、
また「ノンカフェイン」でも
まったくゼロでない場合も
あるので注意しましょう。
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